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スペシャルインタビューvol.1

本サイトでは、ニュルブルクリンク24時間レースの魅力を語ってくれる方に、不定期で特別インタビューを掲載いたします。
第一回目は、日本モータージャーナリスト協会会長の、日下部保雄さんに登場頂きました。

日下部 保雄

モータージャーナリスト/ドライビングインストラクター
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会長
日本カーオブザイヤー選考委員

学生時代からモータースポーツ活動を始め、ラリードライバーとして1984年の全日本ラリー選手権Aクラスチャンピオン、日本人初の海外ラリー制覇(1979年)を達成。 全日本ツーリングカー選手権では89/90年とDiv.2のシリーズ2位。2002年にはニュルブルクリンク24時間耐久レースでクラス4位入賞。その他国内レースでも数々の優勝経験を誇る。
ハイレベルなドライビングセンスには定評があり、テストドライバーとして、タイヤ、ショックアブソーバーの開発/評価も行なう。
大学卒業後からはモータージャーナリズムの世界でも活躍し、自動車専門誌をはじめ各媒体に新車の試乗レポートやコラムを寄稿。 
それと並行してセーフティドライビング・インストラクターとしても精力的に活動中で、自動車メーカー主催のドライビングスクールにおいてインストラクターを多く務めるほか、自らも各種ドライビングスクールを行なう。

ー日下部さんは、24時間耐久レースだけでなくテストでも数多くのニュルブルクリンク走行経験がおありだと伺っていますが、初走行のキッカケは何だったのでしょう?

89年にポルシェ用のタイヤ開発テストをしたのが最初です。あの頃は928や944ターボや911で1週間ほどテスト走行して帰国するというプログラムを繰り返していて、暫くはほぼ毎月のようにニュルに通ってました。

ー20年以上も前ですね。その頃のニュルは今とは随分違ったんでしょうか?

今よりずっと牧歌的でしたね。一般走行枠で走る観光客もすごく少なくて、人があまりいない田舎という感じ。今のシステマチックな雰囲気とは違う、のんびり感が ありました。

ー初走行より前に持っていたニュルブルクリンクのイメージは、走ってみて変わりましたか?

正直に言うと、走る前にはあまり詳しいことは知りませんでした。ニキ・ラウダがF1で大事故を起こした場所だというのは知ってましたが、それ以外はドイツのドコにあるのかも知らなかった。でも、僕より先にテストしていた横浜ゴムのテストドライバー仲間からの「すごくイイ場所 」とか「一周するだけで大変」といった生の声は聞いていて、実際に自分で走ってみたらみんなが言うとおり、やっぱり大変でした。

ー20kmもありますから、次がどっちに曲がっているかを覚えるのもひと苦労だとか。

僕はラリー出身なので道を覚えるのは早かったんですが、手強いサーキットだなと。路面のミューが低いし、高低差もダイナミックでレイアウトもトリッキーでだまされやすい。しかも走行スピードは速くて、例えて言うなら芦ノ湖スカイラインをずっと4速か5速で走っているようなもの。各コーナーのクセを覚えたつもりで間違っていたら、すぐにクラッシュしてしまうでしょう。こんなチャレンジングなコースは世界中のどこにもないと思います。

ーそして2002年には24時間耐久レースに出場し、初参加で初入賞されて。

夜、前がよく見えなくて困りました。ヘッドライトだけでは足りないのに外灯などないですから。他のクルマの後ろについていこうとしたら、向こうもよく見えてないからコッチを先に行かせようとして譲ってくる(笑)。知らぬ間にコースを外れ、気付いたら時速170kmでダートを走ってたなんてこともありました。

ーテストと違って、コースだけでなく敵チームとの闘いもありますよね。

でも24時間耐久ですから、他チームを意識するよりもまず、自分たちが安定して走ることが第1です。クルマを壊さずに戻ってくる為には、テスト走行の経験が多いに役立ったと思ってます。

ーニュルブルクリンク24時間レースは、他のレースとはかなり違う雰囲気ですよね。

普通のレースとは違う、かなり独特な雰囲気があると思います。ピットを何台ものマシンでシェアするのに混乱が起きないフェアプレイ精神や譲り合いの心はニュル24時間ならではのものだと思います。210台もエントリー出来るので、ワークスだけでなく数多くのアマチュアチーム/ドライバーが参戦しているのも良い点だと思います。ツーリングカー耐久レースの世界最高峰でありながら、アマチュアリズムとの共生が出来ている。そんなニュルの精神に上手く溶け込んで他チームとの交流することで、レースがより楽しくなると思います。例えワークスのトップドライバーとであっても、セイフティゾーンなどない山の中を一緒に走り、あの場を共有した仲間意識が芽生えます。ニュル24時間レースに出場した人だけの輪に入れる感じですね。

ー多くの自動車メーカーがニュルブルクリンクでテスト走行をしていますが、その結果生まれた市販車を通じて私たちが得られるベネフィットは何でしょうか?

メーカーのコースでテストしているだけでは得られない、予想外の状況をニュルは与えてくれます。それによってテスト車輌は徹底的に鍛えられるので、監視した市販車は懐の深い製品に仕上がります。つまり、一般公道で走る時にパフォーマンスのマージンがより多くなりますので、よりコントロール性や安全性が高いクルマとなることが、市販車ユーザーに与えられるベネフィットだと思います。クルマの余力はそのままドライバーの余力に繋がりますから

ーニュルブルクリンク抜きでは、優れたクルマは作れない?

スポーツカーについては、そう言って差し支えないと思います。昔は、ニュルで走るとシャシーが折れてしまう日本車もありました。一般のテストコースの走行では思 いも寄らない動きに対応しないとニュルでは走れません。ニュルで上手く走れるクルマは、普通のサーキットを速く走れるクルマとイコールではありません。キレイな路面でストロークの少ないレーシングカーで出す普通のサーキット用のセットアップは、決して一般公道では通用しないものでしょう。自動車メーカーに限らず、タイヤやサスペンションなどのメーカーもニュルでテストを重ねることで多くの要求を突きつけられ、それをクリアすることで製品のタフネスさを身につけています。

ーこれからは、電気自動車を中心とした”脱ガソリン”のエコ時代ですが、エコカーにもニュルブルクリンクは貢献しますか?

ニュルが鍛えてくれるのは、車体と動力の性能です。今現在の電気自動車はまだ、ニュルをガソリンエンジン車と同様に走る性能は持っていないでしょう。でも、とても条件の悪いニュルのコースで鍛えていけば、今は重い車体の剛性をより高めるなどの技術が開発されるでしょう。エコカーの時代になっても、ニュルの存在が多くの人に貢献している状況は変わらないと思います。厳しい条件でのテストですから、稀には死を含めた犠牲を払うこともありますが、もっと多くの人を救うコトに貢献していると考えられます。

ー最後に、今のご自身にとってニュルブルクリンクはどんな存在ですか?

ニュル以上に楽しいサーキットはないですね。コークスクリューで有名なラグナセカ(アメリカ)よりも高速型で、しかもアップダウンやアンジュレーションが激しいから、合法的に峠道をアクセル全開で走ってるような感じ。チャンスがあれば、プライベートでも走りに行くかもしれません。

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